マラドーナ2世の終わり

公開日: : サッカー, 未分類

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コパアメリカ・センテナリオ2016決勝戦アルゼンチン対チリはPK戦へ。
アルゼンチンPKキッカーの1番手は、エースのメッシ。

いったい何度目のことなのか。
エースはPK失敗するものなのか。
いやただエースだけに印象深いだけなのか。
よくある話のようにメッシはPKを失敗し、
アルゼンチンは結局いつものように準優勝。
試合後は失意のあまりか気持ちが切れてしまったのか
メッシまさかの代表引退宣言。
(凡人の草サッカーおじさんの私には超一流の心境は計り知れない。)

PK失敗で記憶に鮮やかなのは、94年アメリカW杯の決勝。
やはりイタリアのR.バッジョがPK戦で失敗し、敗退。
哀愁漂う後ろ姿。
本人やイタリア人には失礼かもしれないが、これはカッコ良カッタ。

他には、86年メキシコ大会の準々決勝での
フランス対ブラジルの試合でも起こった。
1-1で後半残り時間わずかのブラジルのPK。
ブラジルの10番、ジーコが失敗。
その後PK戦になり、今度はフランスの10番プラティニが失敗。
両チーム10番の失敗の後、結局はフランスが勝ち上がる。
なぜだか大事な場面でPK失敗する10番やエースが多いような気がする。

ただ、冷静に分析してみれば、
大事な場面でPKを蹴るのはだいたいがエースであり、
失敗するのも、もちろんエースが多いってだけなのかも
知れないが、ドラマチックなことに変わりはない。

ところで、アルゼンチンの永遠のエースといえば、マラドーナだ。
アルゼンチンにはマラドーナ以降にも、
10番タイプの才能あふれる選手がたくさん現れているが、
皆さんマラドーナ2世の肩書きをつけられそうになると、
いやー比べてもらえるだけで満足です!とか
とてもマラドーナの領域にはまだまだです!など
殊勝で謙虚なコメントを残しながら、
結局その肩書きがプレッシャーなのか、もらうのが嫌なのか
いまいちアルゼンチン代表を背負って立つまでは至らずに
なんとなくフェードアウトしてきている。
オルテガ、アイマール、テベスなどなど。

しかし、ここにきてマラドーナ様の絶対エース感が
だいぶ薄れてきた様に感じる。
(私の心の中では、未だにそしておそらく永遠に絶対エースなのですが、)
そう、メッシだ。
マラドーナ以降、やっとマラドーナ2世の呪縛から逃れ
マラドーナ派かメッシ派かといった論争がされるほど
ほぼ同格の扱いをされる様な初めての選手になった。
そして、今回のコパアメリカ・センテナリオで優勝さえすれば、
アルゼンチンの英雄として、マラドーナと並び賞される男に
なれると目されていた。しかし、PK失敗し敗退。

実際にはメッシがマラドーナを越えようとか、英雄になろうとかを
モチベーションにしているとは到底思えないが、
代表での戴冠には静かに燃えていたに違いないこと、
そして今回のコパアメリカ・センテナリオが最高のチャンスだったことは
間違いない。しかし、PK失敗し敗退。
悲しみに沈む姿が痛々しくて、泣きそうになった。
(ただ、まだ1番手なのに失敗直後から落ち込みすぎだろとは思ったが)

試合後のまさかの代表引退宣言もその瞬間の心情としては
致し方ないのかもしれない。

では、マラドーナはW杯を母国にもたらしたからアルゼンチンの英雄とされているのだろうか。
それとも弱小ナポリでスクデットを獲得したからなのか。
いやそれだけでは、自分の名前を冠した宗教まで起こってしまうほどの
母国の英雄になりえないだろう。
私が思うに、彼のゴールへの執念、勝利への執念、優勝への執念に
アルゼンチン国民は熱狂し陶酔したのだ。

怪我をさせようとしていると思うほどの深いスライディングタックル。
囲み踏みつけ押しつぶそうと殺到する何人もの相手選手。
試合中、自分よりはるかに背の高いDFから始終発せられる汚い挑発。
それでも、圧倒的なテクニックとスピード、鎧のような筋肉を武器に
何度倒されようとも、心を乱されようとも、諦めることなく
相手DFを置き去りにし、相手ゴールを突き破り、相手チームを地に這わせる。
そんな小柄な豆タンクのようなモジャモジャ頭の天才に
アルゼンチン国民だけではなく、世界中のサッカーファンが恋してしまった。
(幼い頃の私もまさしくfell in loveでした。)

現代サッカーに、マラドーナのような選手を期待するのはナンセンスかもしれない。
(というか、ナンセンスなんだろう。)
チーム戦術ありきのサッカーには不必要な存在なのかもしれない。
だが、彼が作り出したの熱狂や興奮、荒々しさと魔法が同居するような瞬間を
懐かしく思うのは私だけではないと思う。

やはりまだメッシはマラドーナには並ぶことはできていない。

現在彼は29才。2年後のロシアW杯の時には31才。
まだまだメッシのいないアルゼンチン代表は見たくない。
そして、一度でいいから、負けず嫌いな彼がチームの中心で叫び鼓舞する姿を見てみたい。
きっとその先の未来には、マラドーナ2世の呪縛から解き放たれたアルゼンチン代表と
控えめな笑顔で黄金のトロフィーを掲げる小柄な10番がいるはずだ。

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