経験則の公的責任回避（発言ビビる）

公開日： 2016/05/23 : ささやき, 社会

sumaho

ツイッターやフェイスブックなどのSNSの普及により、公人や有名人または芸能人などの注目される存在ではなくとも、自分の意見や考えを不特定多数へ発信し不特定多数に見られる社会になった。

それらの不特定多数から不特定多数へと発信された情報をうまく利用すると、美味しい（と評判の）レストランや丁寧な診察をしてくれる（と評判の）病院を探したり、離れた街や施設の混雑具合やイベントの盛り上がりなどをほぼタイムリーに把握できたりして、日々の社会生活をより効率良くより楽しく過ごすためのツールとなるだろう。

また、東日本大震災と福島原発事故や熊本地震などの災害時などには重要情報の共有や安否確認などに利用できる強力なツールでもある。

先日、5月とは思えないほど気温が上がった日曜日、小六になる娘がバスケの練習中に気分が悪くなったと連絡があり、慌てて小学校の体育館へ迎えに行った。

体育館に着いてみると屋外にある涼しい日陰のコンクリートの通路にグッタリと横たわっていた。聞くと、吐き気と頭痛と倦怠感で自分で立つのも覚束ないようだ。（まるで酷い二日酔いの私。一緒にするなと奥さんに怒られるのでカッコで。）

とにかく背負って車に乗せて帰宅し、涼しくしてベッドに寝かせた。

熱中症ならとにかく水分と塩分だとミネラル補給タブレットと水を少しずつ与えて休ませた。すると今度は寒気がすると言ったり、折角摂った水分とタブレットを吐いてしまったりしてなかなか落ち着かない。

明らかに軽度の脱水症状なので、少しずつ水分摂りながら休めば回復するだろうと様子を見ていると、心配性の奥さんはしきりにスマホで熱中症のことを調べている。どのネット記事でも、「手遅れにならないうちに病院へ」「グッタリしてたら救急車を呼んで」ととにかく病院へと忠告している記事ばかりのよう。

こうなると奥さんも病院へ行かないと安心しない。電話で救急外来をやってる最寄りの病院に相談してみる。状況と症状を説明すると「ご心配でしたら外来へいらしてください」とのこと。休み始めた娘には申し訳ないが、起こして再び車に乗せて病院へ。

少し待って診察してもらうと、やはり軽度の熱中症だろう、もう回復しつつあるので帰宅しても大丈夫だろうとのこと。念のため点滴していきますか？と聞かれると、もちろん奥さんは是非お願いしますと二つ返事。小一時間点滴してもらうと娘はスッカリ回復して、「お腹空いた」と一言。よかったよかった。

娘の点滴中、待合ロビーで待っている間、奥さんが調べていたネットの情報について私はふと思った。

今回、熱中症についてネットで調べてみると前述したように、安全確実な対処法がほとんどだった。それはネットの性質上、もし自分の記事のせいで容態が悪化し大問題になったら社会的に大バッシングになりかねない危険性を、記事を書く時に感じているからだと思う。そういう心理になるのは仕方ないし、当然のことだろう。

ここで私が心配してるのは、ネットの情報に依存し過ぎた場合、安全確実な情報にするために削ぎ落とされた他の多数の可能性もその記事を見た人には無いものにされてしまうことだ。

普段から私は週に2日ほど専門学校で講師をしている。そこで学生に接していると、今の日本の若い世代って無難に安全にと縮こまって自分を守ることに一所懸命な人が多くて、大胆にやってみる大らかさや多少の失敗やストレスにめげない強さが足りないと感じている。その理由の一つには、本人と親世代共々ネットの情報に依存し過ぎているせいなのではあるまいか、と。

ここまでなら大丈夫、これ以上はヤバイといった線引きは、実際に自分で経験してみないと分からないものだろう。今回の病気やケガの場合は取り返しのつかないこともあるので安全確実な対処法をとる事は大切なことだと思う。ネットの情報を参考に行動を決めることも便利で安心なのかもしれない。

だが、それはそれとして、自分でやってみたり試してみること、そして失敗してみること、そうやって経験を増やしていくこと。また、そういう沢山の経験を持つ人の話も沢山聞くことも大事なんだろうと思う。

昔から言われる格言「失敗は成功のもと」。

単純ながらいつの時代でも金言なのだ。